がん代謝免疫療法
がん代謝免疫療法
免疫療法は、これまでのがん治療法(外科療法、化学療法、放射線療法)だけでは困難であった各種がんに対しても有効な「第4のがん治療法」として注目されています。
しかしながら、難治性がんや再発がんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど)を用いた免疫療法であっても、十分な治療効果が得られないケースが報告されています。
当クリニックが提供する「がん代謝免疫療法」は、こうした課題を克服するために誕生した新たな治療法です。免疫チェックポイント阻害薬に加えて、免疫細胞や腫瘍細胞の代謝を調整する複数の既存薬を組み合わせることで、抗腫瘍免疫の働きを多面的に強化し、治療効果の向上を目指します。
本治療法は、鵜殿平一郎医学博士(岡山大学学術研究院医歯薬学域 代謝免疫制御学講座 教授)の長年にわたる基礎研究をもとに開発されました。当クリニックでは、その発明に基づく特許技術を自由診療としてご提供しております。
鵜殿平一郎医学博士の研究・経歴
https://soran.cc.okayama-u.ac.jp/html/c9295fa6ba9f02cb74506e4da22f6611_ja.html
がん代謝免疫療法は、すべてのがん患者さんに適応される治療ではありません。
現在の病状、既往歴、検査結果、全身状態などを総合的に評価したうえで、医師が個別に適応可否を判断します。
一般的には、以下のような状況にある方が、治療対象になります。
※治療内容や身体への影響を考慮し、全身状態が著しく低下している場合(PS3以上)には、適応とならないことがありますが、最終的には担当医師が判断します。
PS(Performance Status)は、日常生活動作の制限の程度を示す指標です。
| PS0 | 全く問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。 |
|---|---|
| PS1 | 激しい肉体労働は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座位での作業は行える。 |
| PS2 | 歩行可能で身の回りのことは自立して行えるが、作業はできない。日中の50%以上をベッド外で過ごす。 |
| PS3 | 限られた身の回りのことのみ可能。日中の50%以上をベッドまたは椅子で過ごす。 |
| PS4 | 全く動けず、身の回りのこともできない。終日ベッドまたは椅子で過ごす。 |
がんに対する免疫治療では、免疫細胞が腫瘍に届くこと、免疫細胞が十分に働くこと、そしてがん細胞を攻撃対象として認識できることが重要です。一方で、オプジーボ単剤では、腫瘍の性質や患者さん自身の免疫状態によって、十分な効果が得られにくい場合があります。
本がん代謝免疫療法では、オプジーボ、抗糖尿病薬、抗菌薬を組み合わせることで、腫瘍のまわりの免疫環境を整え、免疫細胞がより働きやすい状態を目指します。

実際に、岡山大学での臨床試験報告では、進行性の膵癌患者において、オプジーボと抗糖尿病薬の併用療法により、7年以上再発なく生存されている症例が論文で報告されています。(CT画像等の経過および腫瘍マーカーの低下を確認) *1 *2
また、マウスモデルでの実験結果では、オプジーボと抗糖尿病薬の併用療法では抑制しきれなかった再発がんの進行を、抗菌薬を加えた「がん代謝免疫療法」では抑制し、腫瘍を完全に消去できたというデータがあります。*3
*1 Durable response to nivolumab combined with metformin in advanced pancreatic cancer: A case report with seven years of follow-up. Sato R, Hotta K, Kubo T, Horiguchi S, Kato H, Matsumoto K, Kozuki T, Udono H, Kiura K, Otsuka M. Cureus 2025 17(2): e79001
*2 Phase-Ib dose-finding and pharmacokinetic trial of metformin combined with nivolumab for refractory/recurrent solid tumors. Kubo T, Kato H, Horiguchi S, Kozuki T, Asagi A, Yoshida M, Udono H, Kiura K, Hotta K. Int J Clin Oncol 2025 30:1537
*3 Metformin synergizes with PD-1 blockade to promote normalization of tumor vessels via CD8T cells and IFNgamma.Tokumasu M, Nishida M, Zhao W, Chao R, Imano N, Yamashita N, Hida K, Naito H, Udono H. Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Jul 23;121(30) e2404778121
免疫のブレーキを外す役割
オプジーボは、PD-1という免疫チェックポイントを阻害することで、T細胞ががん細胞を攻撃しやすい状態を目指す薬剤です。オプジーボはPD-1阻害抗体として位置づけられています。
T細胞の働きや腫瘍血管・免疫環境を整える可能性
抗糖尿病薬には、腫瘍血管の正常化を通じて免疫細胞が腫瘍内に入りやすくなる可能性や、腫瘍内のCD8陽性T細胞の疲弊を抑える可能性が報告されています。
がん細胞の感受性や腸内環境への作用が期待される可能性
抗菌薬については、がん細胞がT細胞から攻撃されやすくなる可能性や、腸内細菌叢を介して免疫環境に影響する可能性が想定されています。
がん細胞は、免疫細胞(キラーT細胞)の攻撃を弱める複数の仕組みを使い、体の防御から逃れようとします。
その結果、免疫細胞の働きが低下し、がんが増殖してしまうことがあります。
がん代謝免疫療法では、異なる働きを持つ複数の医薬品を組み合わせることで、免疫のブレーキを解除し、弱った免疫反応を段階的に立て直すことを目指します。
ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、「免疫チェックポイント(ブレーキ)阻害薬」の1つですが、単独で使用した場合の有効性(奏効率)はがんの種類にもよりますが概ね2〜3割程度にとどまることが多いです。この理由を理解するためには、オプジーボが「がん細胞を直接攻撃する薬」ではなく、「免疫細胞(T細胞)のブレーキを解除する薬」であることを踏まえる必要があります。
有効性が一部の患者さんに限られる主な理由と、がん代謝免疫療法の考え方は、以下の5つに分類されます。
オプジーボが効くための大前提として、「がん細胞を攻撃できるT細胞が、すでにがんの周囲に集まっていること」が必要です。
T細胞が腫瘍内に集まっているが、ブレーキ(PD-1/PD-L1)をかけられて休眠している状態。この場合、オプジーボでブレーキを外すことで、治療効果が認められる可能性があります。
そもそも腫瘍内にT細胞が入り込めていない状態。ブレーキを外す薬を使っても、攻撃するT細胞が現場にいないため、十分な効果が得られにくいと考えられます。一方で、がん代謝免疫療法では、オプジーボに抗糖尿病薬を組み合わせることで、腫瘍血管の正常化が期待され、免疫細胞が腫瘍内に集まりやすくなる可能性があります。※1
オプジーボは、T細胞にある『PD-1』というアンテナに蓋をすることで、がん細胞が出すPD-L1(T細胞を疲弊させ攻撃にブレーキをかけるシグナル)をブロックする抗体医薬です。しかし、すべてのがん細胞がPD-L1のシグナルを使っているわけではありません。
がん細胞表面上にPD-L1が発現していない場合、他の分子からの疲弊シグナルがT細胞を疲弊させて免疫から逃れているため、オプジーボでPD-1/PD-L1経路をブロックしても十分な効果が得られにくい可能性があります。一方で、がん代謝免疫療法では、抗糖尿病薬により、PD-1以外の経路で生じるT細胞の疲弊が和らぎ、免疫細胞の働きが改善する可能性があります。※2
免疫細胞ががんを攻撃するには、がん細胞を「正常な細胞ではなく、排除すべき異物」として認識する必要があります。
一方で、がん代謝免疫療法では、抗菌薬により、腫瘍細胞のT細胞に対する感受性が回復し、免疫による細胞死が起こりやすくなる可能性があります。
がんの周囲(腫瘍微小環境)は、免疫細胞にとって非常に活動しにくい環境になっています。
PD-1以外にも、CTLA-4、TIM-3、LAG-3といった別のブレーキが存在し、がん細胞がそれらを利用している場合があります。※2, ※3
制御性T細胞(Treg)や骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)など、がんの味方をして攻撃担当のT細胞を邪魔する細胞が多く存在すると、オプジーボの効果が十分に発揮されにくくなる可能性があります。一方で、がん代謝免疫療法では、抗糖尿病薬により、制御性T細胞、MDSCs、TAMなどによる免疫抑制環境が緩和される可能性があります。※4, ※5
近年の研究で、患者さんの「腸内細菌叢」のバランスが、オプジーボなどの免疫療法に対する効果に影響することが報告されています。特定の有益な腸内細菌が多い患者さんは薬が効きやすく、抗生物質などで腸内細菌のバランスが崩れていると効きにくい傾向があります。
一方で、がん代謝免疫療法では、抗菌薬により、腸内環境を介した免疫反応が補助され、腫瘍細胞に対するT細胞の反応性が改善する可能性があります。※6
※1 Metformin synergizes with PD-1 blockade to promote normalization of tumor vessels via CD8T cells and IFNgamma. Tokumasu M, Nishida M, Zhao W, Chao R, Imano N, Yamashita N, Hida K, Naito H, Udono H. Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Jul 23;121(30)
※2 Immune-mediated antitumor effect by type 2 diabetes drug, metformin. Eikawa S, Nishida M, Mizukami S, Yamazaki C, Nakayama E, Udono H. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Feb 10;112(6):1809-14
※3 Mitochondrial reactive oxygen species trigger metformin-dependent antitumor immunity via activation of Nrf2/mTORC1/p62 axis in tumor-infiltrating CD8T lymphocytes. Nishida M, Yamashita N, Ogawa T, Koseki K, Warabi E, Ohe T, Komatsu M, Matsushita H, Kakimi K, Kawakami E, Shiroguchi K, Udono H. J Immunother Cancer 2021, 9(9): e002954
※4 Attenuation of CD4(+)CD25(+) Regulatory T Cells in the Tumor Microenvironment by Metformin, a Type 2 Diabetes Drug. Kunisada Y, Eikawa S, Tomonobu N, Domae S, Uehara T, Hori S, Furusawa Y, Hase K, Sasaki A, Udono H. EBioMedicine. 2017 Nov;25:154-164.
※5 Metformin induces CD11b+ cell-mediated growth inhibition of an osteosarcoma: implications for metabolic reprogramming of myeloid cells and antitumor effects. Uehara T, Eikawa S, Nishida M, Kunisada Y, Yoshida A, Fujiwara T, Kunisada T, Ozaki T, Udono H. Int. Immunology 31(4):187-198, 2019.
※6 Gut microbiome influences efficacy of PD-1-based immunotherapy against epithelial tumors. Routy B, et al. Science 2018 Jan 5;359(6371):91-97.
本治療で使用する医薬品は、すべて国内で製造販売承認を受けている薬剤であり、それぞれの副作用や注意点は公的に定められた添付文書に記載されています。治療開始前には、これらについて担当医師から説明を行います。
一方で、免疫の働きが過剰になった場合には、がん以外の正常な組織にも影響が及ぶ可能性があり、免疫に関連した副作用が生じることがあります。このような副作用が起こる可能性や程度には個人差があり、現時点ですべてを正確に予測することはできません。
ただし、オプジーボと抗糖尿病薬を併用した医師主導の臨床研究や症例報告においては、現時点で重篤な副作用は多く報告されていません。当院では、治療中も定期的な検査や診察を行い、副作用の兆候を早期に把握しながら、安全に配慮した管理体制のもとで治療を行います。
初診・カウンセリング
現在の病状や治療歴、検査結果をもとに、本治療の適応可否について医師が確認します。
治療方針の説明
治療内容、考えられる影響や注意点、リスクについて説明し、十分にご理解・ご同意いただいた上で治療を開始します。
治療実施
オプジーボの点滴投与(2週間に1回を目安)に加え、抗糖尿病薬等の内服薬を毎日服用していただきます。1クールは8週間とし、治療経過および評価を行います。
経過観察・継続判断
治療中および治療後の体調・検査結果を踏まえ、治療継続の可否を判断します。
当院の治療は公的保険が適用されない自由診療のため、治療にかかる費用はすべて自己負担です。ただし、医療費控除や民間のがん保険などが適用できる場合がございます。詳しくはお問い合わせください。
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