がん代謝免疫療法の詳しい解説
がん代謝免疫療法の詳しい解説
免疫療法は、これまでのがん治療法(外科療法、化学療法、放射線療法)だけでは困難であった各種がんに対しても有効な「第4のがん治療法」として注目されています。
しかしながら、難治性がんや再発がんに対しては、免疫チェックポイント阻害薬(オプジーボなど)を用いた免疫療法であっても、十分な治療効果が得られないケースが報告されています。
当クリニックが提供する「がん代謝免疫療法」は、こうした課題を克服するために誕生した新たな治療法です。免疫チェックポイント阻害薬に加えて、免疫細胞や腫瘍細胞の代謝を調整する複数の既存薬を組み合わせることで、抗腫瘍免疫の働きを多面的に強化し、治療効果の向上を目指します。
本治療法は、鵜殿平一郎医学博士(岡山大学学術研究院医歯薬学域 代謝免疫制御学講座 教授)の長年にわたる基礎研究をもとに開発されました。当クリニックでは、その発明に基づく特許技術を自由診療としてご提供しております。
鵜殿平一郎医学博士の研究・経歴
https://soran.cc.okayama-u.ac.jp/html/c9295fa6ba9f02cb74506e4da22f6611_ja.html
免疫のブレーキを外す役割
オプジーボは、PD-1という免疫チェックポイントを阻害することで、T細胞ががん細胞を攻撃しやすい状態を目指す薬剤です。オプジーボはPD-1阻害抗体として位置づけられています。
T細胞の働きや腫瘍血管・免疫環境を整える可能性
抗糖尿病薬には、腫瘍血管の正常化を通じて免疫細胞が腫瘍内に入りやすくなる可能性や、腫瘍内のCD8陽性T細胞の疲弊を抑える可能性が報告されています。
がん細胞の感受性や腸内環境への作用が期待される可能性
抗菌薬については、がん細胞がT細胞から攻撃されやすくなる可能性や、腸内細菌叢を介して免疫環境に影響する可能性が想定されています。
がん細胞は、免疫細胞(キラーT細胞)の攻撃を弱める複数の仕組みを使い、体の防御から逃れようとします。
その結果、免疫細胞の働きが低下し、がんが増殖してしまうことがあります。
がん代謝免疫療法では、異なる働きを持つ複数の医薬品を組み合わせることで、免疫のブレーキを解除し、弱った免疫反応を段階的に立て直すことを目指します。
ニボルマブ(商品名:オプジーボ)は、「免疫チェックポイント(ブレーキ)阻害薬」の1つですが、単独で使用した場合の有効性(奏効率)はがんの種類にもよりますが概ね2〜3割程度にとどまることが多いです。この理由を理解するためには、オプジーボが「がん細胞を直接攻撃する薬」ではなく、「免疫細胞(T細胞)のブレーキを解除する薬」であることを踏まえる必要があります。
有効性が一部の患者さんに限られる主な理由と、がん代謝免疫療法の考え方は、以下の5つに分類されます。
オプジーボが効くための大前提として、「がん細胞を攻撃できるT細胞が、すでにがんの周囲に集まっていること」が必要です。
T細胞が腫瘍内に集まっているが、ブレーキ(PD-1/PD-L1)をかけられて休眠している状態。この場合、オプジーボでブレーキを外すことで、治療効果が認められる可能性があります。
そもそも腫瘍内にT細胞が入り込めていない状態。ブレーキを外す薬を使っても、攻撃するT細胞が現場にいないため、十分な効果が得られにくいと考えられます。一方で、がん代謝免疫療法では、オプジーボに抗糖尿病薬を組み合わせることで、腫瘍血管の正常化が期待され、免疫細胞が腫瘍内に集まりやすくなる可能性があります。※1
オプジーボは、T細胞にある『PD-1』というアンテナに蓋をすることで、がん細胞が出すPD-L1(T細胞を疲弊させ攻撃にブレーキをかけるシグナル)をブロックする抗体医薬です。しかし、すべてのがん細胞がPD-L1のシグナルを使っているわけではありません。
がん細胞表面上にPD-L1が発現していない場合、他の分子からの疲弊シグナルがT細胞を疲弊させて免疫から逃れているため、オプジーボでPD-1/PD-L1経路をブロックしても十分な効果が得られにくい可能性があります。一方で、がん代謝免疫療法では、抗糖尿病薬により、PD-1以外の経路で生じるT細胞の疲弊が和らぎ、免疫細胞の働きが改善する可能性があります。※2
免疫細胞ががんを攻撃するには、がん細胞を「正常な細胞ではなく、排除すべき異物」として認識する必要があります。
一方で、がん代謝免疫療法では、抗菌薬により、腫瘍細胞のT細胞に対する感受性が回復し、免疫による細胞死が起こりやすくなる可能性があります。
がんの周囲(腫瘍微小環境)は、免疫細胞にとって非常に活動しにくい環境になっています。
PD-1以外にも、CTLA-4、TIM-3、LAG-3といった別のブレーキが存在し、がん細胞がそれらを利用している場合があります。※2, ※3
制御性T細胞(Treg)や骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)など、がんの味方をして攻撃担当のT細胞を邪魔する細胞が多く存在すると、オプジーボの効果が十分に発揮されにくくなる可能性があります。一方で、がん代謝免疫療法では、抗糖尿病薬により、制御性T細胞、MDSCs、TAMなどによる免疫抑制環境が緩和される可能性があります。※4, ※5
近年の研究で、患者さんの「腸内細菌叢」のバランスが、オプジーボなどの免疫療法に対する効果に影響することが報告されています。特定の有益な腸内細菌が多い患者さんは薬が効きやすく、抗生物質などで腸内細菌のバランスが崩れていると効きにくい傾向があります。
一方で、がん代謝免疫療法では、抗菌薬により、腸内環境を介した免疫反応が補助され、腫瘍細胞に対するT細胞の反応性が改善する可能性があります。※6
※1 Metformin synergizes with PD-1 blockade to promote normalization of tumor vessels via CD8T cells and IFNgamma. Tokumasu M, Nishida M, Zhao W, Chao R, Imano N, Yamashita N, Hida K, Naito H, Udono H. Proc Natl Acad Sci U S A. 2024 Jul 23;121(30)
※2 Immune-mediated antitumor effect by type 2 diabetes drug, metformin. Eikawa S, Nishida M, Mizukami S, Yamazaki C, Nakayama E, Udono H. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Feb 10;112(6):1809-14
※3 未発表データ(特許出願中)
※4 Attenuation of CD4(+)CD25(+) Regulatory T Cells in the Tumor Microenvironment by Metformin, a Type 2 Diabetes Drug. Kunisada Y, Eikawa S, Tomonobu N, Domae S, Uehara T, Hori S, Furusawa Y, Hase K, Sasaki A, Udono H. EBioMedicine. 2017 Nov;25:154-164.
※5 Metformin induces CD11b+ cell-mediated growth inhibition of an osteosarcoma: implications for metabolic reprogramming of myeloid cells and antitumor effects. Uehara T, Eikawa S, Nishida M, Kunisada Y, Yoshida A, Fujiwara T, Kunisada T, Ozaki T, Udono H. Int. Immunology 31(4):187-198, 2019.
※6 Gut microbiome influences efficacy of PD-1-based immunotherapy against epithelial tumors. Routy B, et al. Science 2018 Jan 5;359(6371):91-97.
がん代謝免疫療法は、すべてのがん患者さんに適応される治療ではありません。
現在の病状、既往歴、検査結果、全身状態などを総合的に評価したうえで、医師が個別に適応可否を判断します。
一般的には、以下のような状況にある方が、治療対象になります。
※治療内容や身体への影響を考慮し、全身状態が著しく低下している場合(PS3以上)には、適応とならないことがありますが、最終的には担当医師が判断します。
PS(Performance Status)は、日常生活動作の制限の程度を示す指標です。
| PS0 | 全く問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。 |
|---|---|
| PS1 | 激しい肉体労働は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座位での作業は行える。 |
| PS2 | 歩行可能で身の回りのことは自立して行えるが、作業はできない。日中の50%以上をベッド外で過ごす。 |
| PS3 | 限られた身の回りのことのみ可能。日中の50%以上をベッドまたは椅子で過ごす。 |
| PS4 | 全く動けず、身の回りのこともできない。終日ベッドまたは椅子で過ごす。 |
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